ハザードマップで色がついた土地に家を建てて大丈夫?見方と判断軸を住宅の専門家が解説

土地
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土地の説明で「ここは浸水想定3mの区域です」と言われて、頭が真っ白になっていませんか。

最初に結論をお伝えすると、ハザードマップは「買うな」の地図ではなく、「どう備えるか」の地図です。色がついている=即NG、ではありません。

私は地域の住宅会社で営業責任者と設計を兼任しながら、年間60〜80棟の家づくりに関わってきました。色のついた土地で計画を進めたケースも、見送っていただいたケースも、どちらも経験しています。今回はその判断の分かれ目を、現場の実感でお伝えします。

※この記事に出てくる金額や判断の目安は、地域・地形・考え方によって大きく前後します。あくまで参考として読んでください。

この記事でわかること

  • ハザードマップで最優先に見る4つのポイント
  • 「色つき=NG」ではない、現場の判断軸
  • 盛土・高基礎など建物側でできる対策と費用感
  • 土砂災害レッドゾーンだけは別枠で考えるべき理由

ハザードマップとは?——今は「説明されるのが当たり前」

ハザードマップは、洪水・土砂災害・津波などのリスクを色分けで示した地図です。

じつは2020年から、不動産の契約前に水害ハザードマップで物件の位置を説明することが、法律で義務になりました。つまり今は、色のついた土地なら必ず「ここは浸水想定○mです」と聞かされます。

だから本当の問題は、「説明されるかどうか」ではなく、説明された後にどう判断するかなんです。ここから先が、この記事の本題です。

「重ねるハザードマップ」で最優先に見る4つ

国土地理院の重ねるハザードマップなら、住所を入れるだけで複数の災害リスクを一枚の地図で確認できます。見るべきは、まずこの4つです。

① 浸水深——どのくらい浸かるか

色の濃さは浸水の深さを表しています。目安として、0.5mで床上浸水のライン、3mで2階の床に届くレベル、5mで2階ごと水没です。

ただし、これは「その想定規模の雨が降った場合」の数字です。数字だけで判断せず、後述の「実績」とセットで見てください。

② 浸水継続時間——水がどれくらい引かないか

見落とされがちですが、生活再建に直結するのがここです。数時間で引く場所と数日引かない場所では、同じ浸水深でも意味がまったく違います。

③ 家屋倒壊等氾濫想定区域

川の近くで、氾濫の勢いで建物ごと壊れるおそれのある区域です。ここだけは別格だと考えてください。浸水は「備える」余地がありますが、倒壊は備えようがありません。

④ 避難場所までの距離と経路

いざという時、どこへどう逃げるか。避難場所が近い・高台への経路があるという条件は、計画を進める判断材料のひとつになります。

「色がついている=建てちゃダメ」ではない——現場の判断軸

ここからが、地図だけでは分からない話です。

同じ「浸水想定3〜5m」でも、実際にはほとんど浸水したことがない場所と、浸水の履歴が重なっている場所があります。私の経験では、想定は色つきでも実際の浸水実績がほとんどなく、施主さんにリスクを十分ご理解いただいた場合は、対策を考えながら計画を進めるケースがあります

つまり、見るべきは「想定」と「実績」の両方なんです。

意外なほど差が出るのが、道路の冠水です。大雨のたびに冠水する道路と、まったく冠水しない道路が、同じ想定区域の中に混在していることがあります。この地域差は地図に出てきません。

だから、候補地が決まったらぜひやってほしいのがこの3つです。

  • 大雨の日に現地(と周辺の道路)を見に行く
  • 近所の方に「このあたり、水が出たことありますか?」と聞く
  • 市役所で過去の浸水履歴を調べる

もうひとつ、心に留めてほしいことがあります。災害に関する国の基準や制度は、今後より厳しくなっていく傾向があるということです。だからこそ「実績がないから大丈夫」と楽観するのではなく、備えを前提に、リスクの考え方をしっかり持って判断してほしいんです。

設計・建築でできる水害対策と費用感

土地のリスクは、建物側である程度カバーできます。実際によく使う対策と、ざっくりの費用感です(地域・地形・工事内容で大きく前後します)。

対策内容費用のイメージ
高基礎基礎を通常より高く作る数十万円〜(高さ次第で大きく変動)
盛土(法面仕上げ)50cm程度を緩やかな法面で盛る20〜50万円程度
盛土(擁壁付き)土留の擁壁まで作って高く盛る100万円超も
2階建てを選ぶ垂直避難と生活継続の場所を確保
設備の位置を上げるエコキュートや室外機を高い位置へ

実例として、浸水履歴のある実家の敷地での建て替えで、盛土+2階建ての組み合わせで対応したケースがあります。土地を選び直せない事情があっても、打てる手はあるんです。

そして、建物でどれだけ備えても、最後の砦は保険です。

水害リスクのある土地に建てるなら、火災保険の「水災補償」を外さない・定期的に見直すが鉄則です。補償内容は保険会社で意外と差があるので、まとめて比較しておくと安心ですよ。

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土砂災害のイエローゾーン・レッドゾーンは「別枠」で考える

ここまでは主に水害の話でしたが、土砂災害の区域指定は扱いが違います。

イエローゾーン(土砂災害警戒区域)は「注意して備える区域」ですが、レッドゾーン(特別警戒区域)は建物の構造に法的な制限がかかる区域です。そして今、お金の面でも線引きが厳しくなっています。

  • 2021年10月から、レッドゾーン内の新築はフラット35Sの対象外に
  • 2026年の税制改正で、レッドゾーンでの新築を住宅ローン控除の対象外とする措置が決定(※2026年7月時点の情報です。適用時期など詳細は最新情報を確認してください)

国の姿勢として「レッドゾーンに新築を建てることを推奨しない」方向がはっきりしてきた、ということです。水害の色つきとは違い、レッドゾーンは原則避ける・どうしても検討するなら専門家を交えて、をおすすめします。

まとめ:確認すること早見表

確認することどこで見る判断の目安
浸水深重ねるハザードマップ0.5mで床上/3mで2階床(参考値)
浸水継続時間同上長いほど生活再建が大変
家屋倒壊等氾濫想定区域同上該当なら原則見送り
避難場所・経路同上+実地近い・高台への経路があるか
実際の浸水履歴市役所・近所への聞き取り想定と実績のギャップを見る
道路の冠水大雨の日の実地エリア差が大きい
土砂災害レッドゾーン重ねるハザードマップ原則避ける(ローン・税制も不利に)

よくある質問

Q. 色つきの土地は、将来売れなくなりませんか?

A. 影響はゼロではありませんが、「色つき=売れない」ではありません。実際には立地や利便性の影響のほうが大きいです。ただしレッドゾーンは今後の税制の扱いもあり、資産価値の面でも慎重に考えたほうがいいと思います。

Q. 浸水想定区域だと住宅ローンは不利になりますか?

A. 水害の浸水想定区域だけで融資を断られるケースは、現状ほとんど聞きません。注意が必要なのは土砂災害のレッドゾーンで、フラット35Sの除外や住宅ローン控除の対象外化が進んでいます。

Q. 過去の浸水履歴はどこで調べられますか?

A. 市役所の防災担当窓口で確認できることが多いです。あわせて、その土地の近所の方への聞き取りが、実は一番リアルな情報源だったりします。

Q. 実家の建て替えで、土地を変えられない場合は?

A. 盛土や高基礎、2階建ての選択など、建物側の対策を組み合わせる方法があります。私も盛土+2階建てで対応した経験があるので、諦める前に住宅会社へ相談してみてください。

おわりに

ハザードマップで色がついていても、実績・地形・備えの3つを見れば、進めていい土地はあります。逆に、色が薄くても家屋倒壊等氾濫想定区域やレッドゾーンなら立ち止まる。この使い分けが「読み方」の本質です。

ハザードマップは、買うなの地図ではなく、どう備えるかの地図。上手に読めば、土地選びの武器になってくれます。

土地の見方の全体像は土地選びで最初に見るべきことに、地盤の話は地盤改良の費用のからくりにまとめています。台風や地震まで含めた災害への備え全体を知りたい方は災害に強い家の考え方からどうぞ。

候補地の色に悩んでいる方の、判断材料になれば嬉しいです。

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