台風や大雨のあと、「火災保険で直せますよ」と言われた経験はありませんか。あるいは、いざ申請してみたら「これは降りません」と言われて、納得がいかなかった方もいるかもしれませんね。
火災保険は、家を持つ人にとって一番身近な”もしも”の備えです。でも、何が降りて何が降りないのかは、意外と知られていないんです。
私はこれまで住宅の設計や引き渡し後のお付き合いの中で、「降りたケース」も「降りなかったケース」も、現場でたくさん見てきました。今回は保険を売る側でも、申請を代行する側でもない、家をつくる立場から中立に、その境界線を整理してみますね。
火災保険は「火事」だけのものではないんです
まず誤解されやすいのが、火災保険=火事のときの保険、というイメージです。実際には、台風などの風災、雹(ひょう)による雹災、大雪による雪災も、基本の補償に含まれていることがほとんどなんです(2026年時点)。
最近の現場で意外と多いのが、雹の被害です。雹で雨樋が割れたり、ウッドデッキが凹んだり、といったケースは、ここ数年でよく耳にしますね。
こうした被害は火災保険の対象になることが多く、実際に保険が使えた例も少なくありません。建物本体だけでなく、カーポートや物置、アンテナ、屋根に載せたソーラーパネルなども、対象に含まれる場合があります。
「うちは火事なんて起きてないから関係ない」と思っていた設備が、実は守られていた——そういうことが、わりとあるんです。
火災保険が「降りない」一番の理由は”経年劣化”
では、どんなときに降りないのか。一番多いのが、「経年劣化」と判断されるケースです。
ここで私がお伝えしたい見方が一つあります。それは、物理的なダメージが明確な被害ほど降りやすく、軽くて原因が曖昧な被害ほど”経年劣化”と判断されやすい、ということなんです。
たとえば雹や雪の被害は、凹みや割れがハッキリ残りますよね。だから「これは災害によるものだ」と証明しやすく、対象として認められやすい傾向があります。強い台風で屋根材が飛んだ、というのも同じで、原因が明確です。
逆に判断が難しいのが、たとえば台風のあとの雨樋のズレのようなケースです。強い風で動いたのか、もともと劣化していて少しの風でズレたのか——正直、見ただけでは判別しにくいんです。
こうした「災害か、ただの古さか、どちらとも取れる」被害は、自分で申請しても認められにくいのが実際のところです。
さらに、軒(のき)が短い家の外壁やバルコニーは、普段から傷みが早いんです。雨や日差しがまともに当たり続けるので、どうしても劣化が進みやすく、「これは経年劣化ですね」と言われやすい傾向があると、現場で感じています。
このあたりは、家の設計そのものが効いてくる話です(軒の出についてはこちらの「軒の出が家を長持ちさせる理由」でも詳しく書いています)。
「火災保険を使えばタダで直せます」には気をつけて
火災保険にまつわる営業トークで、昔からよく使われるのが「火災保険を使えば実質無料で直せますよ」という言い回しです。
新築を検討される段階でも、たとえば太陽光発電のお話のときに、この手のトークを耳にすることがありますね。「災害で壊れても火災保険で直せるから安心です」という流れです。
ただ、ここは少し整理が必要なんです。太陽光パネルの不具合には、メーカー保証(製造上の不良に対するもの)と、災害による損害(火災保険の領域)があって、性質が違います(2026年時点)。そして、どちらでもない”自然な劣化”だと、どちらの対象にもならないことがあるんです。
この「劣化なのか、災害なのか」が判別しにくいのは、屋根や外壁とまったく同じですね(太陽光と屋根のメンテについてはこちらの「太陽光発電と屋根のメンテナンス」にまとめています)。
「火災保険で直せる」とうたう訪問営業は、最近はあまり効かなくなってきた印象です。ただ、“屋根に無料で上がって点検します”といった点検商法は、今でも健在で、つい最近もそうした営業の話を一件聞きました。
そして一番大事なことを。災害が原因ではないのに、業者にそそのかされてウソの申請をすると、保険金詐欺として、申請した契約者本人が罪に問われる可能性があるんです(消費者庁も注意喚起しています)。「タダで直せる」という言葉には、こうしたリスクが隠れていることを知っておいてほしいんです。
この手の訪問営業・点検商法の断り方は、こちらの「外壁塗装の訪問販売の断り方」で具体的にまとめていますので、あわせて読んでみてくださいね。
地震・津波は、火災保険では降りません
意外と知られていないのが、地震や津波による被害は、火災保険では補償されないということです(2026年時点)。
地震で家が傾いた、地震が原因の火事で焼けた、津波で流された——これらに備えるには、地震保険が必要になります。
そしてこの地震保険は、単独では加入できず、火災保険とセットで契約する仕組みになっています。地震保険は「地震保険に関する法律」にもとづく、国と保険会社が共同で運営する公的な性格の保険だからなんです。
「火災保険に入っているから地震も大丈夫」と思い込んでいる方は、わりと多いんです。一度、ご自分の契約に地震保険がついているか、確認してみるといいかもしれませんね。
水災補償、ついていますか?逆に、つけ過ぎていませんか?
もう一つ確認しておきたいのが、水災補償です。これは、台風や豪雨による浸水・土砂崩れなどの被害を補償するものです。
水災補償は、立地によって必要性が大きく変わります。全国では3分の2くらいの世帯がつけているそうですが(2026年時点)、マンションの高層階や、水害リスクの低い土地では、外している方もいます。
逆に「川が近くにないから」と安易に外すのは、少し早いかもしれません。近くに川がなくても、内水氾濫や土砂災害は起こり得ますので、まずはお住まいの地域のハザードマップを一度見ておくことをおすすめします。
ここがまさに、「自分の保険、ちゃんと中身を把握できているか」を見直すきっかけになる部分なんです。
いちばん安上がりなのは、「保険に頼らずに済む家」
ここまで保険の話をしてきましたが、家をつくる立場として、最後にどうしてもお伝えしたいことがあります。
それは、そもそも被害が出にくい家にしておくのが、一番お金がかからない、ということです。
軒を深く出して雨や日差しから外壁を守る、傷みにくい屋根材を選ぶ、日頃から点検しておく——こうした基本ができている家は、災害でも被害が出にくく、しかも「経年劣化ですね」と言われる場面そのものが減っていくんです。
保険はあくまで”もしも”の備えです。使わずに済むなら、それが一番ありがたいですよね。このあたりはこちらの「長く持つ家をつくるために本当に見るべきこと」や、屋根材の選び方、外壁塗装をしないとどうなるかにもつながる話です。
それでも年月とともにメンテナンス費用はかかってきますので、家のメンテナンス費用は30年でいくらかかるかも、あわせて備えていただけたらと思います。
まずは、自分の補償内容を知ることから
ここまで読んで、「で、うちの火災保険って、結局どこまで守ってくれるんだっけ?」と思われた方も多いのではないでしょうか。
実は、自分の保険証券をきちんと見たことがない、という方はとても多いんです。水災がついているか、地震保険はあるか、補償額は今の家に合っているか——意外と、把握できていないものなんですよね。
火災保険は数年〜10年単位の契約が多いので、更新のタイミングは見直しの好機です。今の補償が手厚すぎたり、逆に足りなかったりすることもあります。
もし「一度ちゃんと比べてみたい」と思ったら、複数社の見積もりをまとめて取れる一括見積もりサービスを使うと、今の保険との違いがつかみやすいですよ。
「自分の火災保険、水災や地震保険までどうなっているか一度きちんと見ておきたい」という方は、複数の保険会社の見積もりをまとめて取り寄せて、今の契約と比べてみると違いがわかりやすいですよ。無料で使えますので、見直しのきっかけにしてみてくださいね。
おわりに
火災保険は、「何が降りて、何が降りないか」を知っているだけで、いざというときの安心感がまるで変わります。
そして本当に大事なのは、保険に頼る前に、被害が出にくい家にしておくこと、そして自分の補償内容を把握しておくことだと、私は思っています。
これから家づくりやリフォームをされる方、すでにお住まいの方の、参考になればうれしいです。


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