はじめに
「壁紙は10年くらいで張り替え、床も20年したらリフォーム」——内装って、そういうものだと思っていませんか?
実は、内装には2つのタイプがあるんです。「寿命が来たら張り替える内装」と、「張り替えずに育てる内装」です。
私は住宅の設計と営業を20年ほどやってきましたが、築15年、20年と経ったお宅を見ていると、この2つの差は年月とともにどんどん開いていきます。
そして、どちらを選ぶかで、住んでからのメンテナンス費用の計画そのものが変わってきます。
今回は、これまで個別の記事でお伝えしてきた無垢床・漆喰に「木製建具」を加えた張り替えない内装の3本柱と、現場で見てきた「張り替える前提の内装が実際どうなるか」を、まとめてお伝えします。
ご自身の家を「どっちの方針で行くか」を考える材料にしてもらえたら嬉しいです。
内装の劣化は「2つのタイプ」に分かれます
まず、この記事の土台になる考え方からお話しします。世の中の内装材は、大きく2つに分けられます。
1つ目は、表面の印刷やシートで見た目を作っている内装。ビニールクロス、シート貼りの建具、クッションフロアなどです。
本体の上に「きれいな表面」を被せている構造なので、その表面が傷んだら、張り替えるしかありません。
2つ目は、素材そのものが仕上げになっている内装。無垢の床、漆喰の壁、本物の木でできた建具などです。
表面も中身も同じ素材なので、傷んでも削ったり塗り直したりして再生できるんです。
どちらが「正解」という話ではありません。1つ目は初期費用が抑えられて柄も自由、2つ目は初期費用が高めだけど張り替え不要——それぞれに合理性があります。
ただ、この違いを知らずに家を建てると、「30年でかかるお金」の計画が大きく狂うことがあります。家全体のメンテナンス費用を30年スパンでまとめた記事もありますが、今回はその「内装版」だと思ってください。
「張り替える前提の内装」は、実際こうなります【現場で見てきた実例】
先にお伝えしておくと、これからお話しするのは「欠陥」ではなく、素材の性質です。張り替える前提で計画していれば、何の問題もありません。
ただ、「こうなることを知らなかった」が一番の後悔につながるので、現場で見てきた実例を正直にお伝えします。
シート貼りの建具は、角からやられ始めます
表面に薄い仕上げ材を被せてデザインを作っている建具(既製品のドアや引き戸の多く)は、10〜20年くらいで、特に角の部分から表面が傷み始めます。
実は私の会社でも、20年以上前は既製のシート建具と木製建具をミックスで使っていました。だから、当時建てた住まいのメンテナンスで、建具の補修や交換に対応してきた実例が実際にあるんです。
軽いうちは補修アイテムで目立たなくできるのですが、築20年ほどで剥離があちこちに進むと補修もなかなか大変で、直すことより交換を選んだ家もありました。
両方の「20年後」を作り手として見てきたからこそ、この差は自信を持ってお伝えできます。
クッションフロアは、10数年で浮きが出ることがあります
水まわりの床によく使われるクッションフロアは、一般的に寿命10〜15年程度と言われています(2026年時点の一般的な目安です)。
実際の現場でも、10数年で浮きが出て張り替えになった事例があります。特に水まわりでの採用が多い素材なので、湿気の影響も受けやすいんですね。
硬くて丈夫な床材にも、意外な弱点があります
「じゃあ水まわりは硬い床材なら安心?」というと、これも一長一短です。
耐水性の高い硬質なパネル式の床材は確かに丈夫なのですが、物を落として一部が欠けてしまったとき、部分的な張り替えが結構大変なんです。実際には、パテ処理で埋めて目立たなくして済ませるケースもあります。
窓枠材は、家の中でいちばん過酷な場所です
意外と見落とされがちなのが窓まわりです。窓枠は、紫外線と湿気(結露)を毎日浴び続ける、室内で一番過酷な場所なんです。
シート貼りや塗装仕上げの窓枠材は、色褪せから始まり、表面の劣化による剥がれ、素材によっては毛羽立ちまで進むことがあります。
面積は小さいのに目線に入りやすい場所なので、ここが傷むと家全体が古びた印象になってしまうんですね。
「張り替えない内装」の3本柱
では、張り替えずに育てる内装にはどんな選択肢があるのか。私が3本柱だと考えているのが、無垢床・漆喰・木製建具です。
① 無垢床|傷も研磨で再生できる床
無垢の床は、傷はつきます。でも15mm厚すべてが本物の木なので、表面が剥がれるという劣化がそもそも起きません。
傷や汚れがどうしても気になったら、研磨して新品近くまで再生できます。経年で色が深くなっていくのも魅力です。
詳しくは無垢床で後悔する人・しない人の違いを解説した記事でお伝えしているので、ここでは「張り替えない床の代表」とだけ覚えてください。
② 漆喰の壁|20年経っても白いまま
漆喰の壁は、15〜20年経っても色変わりがほぼありません。クロスのような黄ばみが出ないので、汚れが気になったらその面だけ塗り直しても、周りと色の差が出ない——つまり「全面張り替え」という発想自体が不要になります。
ひび割れなどのデメリットも含めた実際は、漆喰の家のデメリットと20年後の姿を解説した記事で正直にお伝えしています。
③ 木製建具|実は一番差がつく、第3の柱
そして今回の主役が、ドアや引き戸などの「建具」です。
本物の木材でできた建具は、傷はつくものの、シート建具のように表面が剥がれてみすぼらしくなる、ということが起きません。
経年で色味が濃く深くなっていき、汚れや傷がどうしても気になったら、無垢床と同じように研磨でリフレッシュできます。
木製建具には、大きく2種類あります。
- 既製品でも完全に木材でできているタイプ
- 職人さんが一本ずつ作る「造作建具」
木の良さはどちらも同じですが、造作建具にはもうひとつ大きなメリットがあります。幅・高さ・材種が自由なんです。
「ここだけ幅の広い引き戸にして車椅子でも通れるように」といった、間取りの自由度やバリアフリー対応がしやすいのは、造作ならではの強みです。
家の中でドアほど「毎日触り、毎日目に入る」ものはありません。だからこそ、建具の選び方は20年後の家の印象を大きく左右します。
脇を固める「張り替えない仲間たち」
3本柱のほかにも、張り替えのいらない内装材があります。
- 板張りの壁・天井:木そのものなので剥がれる心配がない
- タイル系:硬く、水にも紫外線にも強い
- 木製の造作枠・巾木:ここが隠れた狙い目です
特にお伝えしたいのが、窓枠やドア枠、巾木を木にすること。先ほどお話しした通り、窓枠は家の中で一番過酷な場所です。
面積は小さいのに劣化が目立つ場所だからこそ、ここを本物の木にするだけでも、家の「老け方」が変わります。
気になるコストと弱点【正直に言います】
いいことばかり書いてきたので、現実的な話もしておきます。
コストは1.2〜1.5倍——ただし条件があります
木製建具のコストは、シート建具と比べて1.2〜1.5倍程度で済むことが多いです。「思ったより差が小さい」と感じませんでしたか?
ただし、これには条件があります。木製建具を中心に、たくさんの数量を扱っている会社の場合の話です。普段シート建具ばかりの会社に特注すると、もっと差が開くことがあります。
これは漆喰の記事でお伝えしたのと同じ理屈です。張り替えない内装は、それを「標準」として使い慣れている会社に頼むのが、品質の面でもコストの面でも一番の近道なんです。
会社選びの考え方は、長持ちを最優先にした住宅会社の選び方の記事でまとめています。
弱点は「反り」と、点検の手間です
木製建具は本物の木なので、多少の反りやすさがあります。すべての建具に出るわけではありませんが、定期点検でチェックや調整が必要な個体が一定数出てきます。
「木は生きている素材」という前提で、点検時に建て付けを見てもらう——そういう付き合い方が必要です。
おわりに
「張り替える内装」と「張り替えない内装」、2つのタイプを見てきました。
誤解しないでいただきたいのは、全部を張り替えない内装にする必要はない、ということです。子供部屋のように、成長に合わせてクロスを張り替えて雰囲気を変える楽しみ方もあります。
壁紙の黄ばみと張替え費用の現実や、床材の張替えコストの話も知った上で、「ここは張り替えを楽しむ場所」「ここは育てる場所」と使い分けるのが、一番賢い選び方だと思います。
ただ、毎日触れるドア、毎日目に入る窓枠、家の大半を占める床と壁——そういう場所に「素材そのものが仕上げ」のものを選んでおくと、家は古びていくのではなく、育っていきます。
築20年の家が「そろそろ全面リフォームかな」ではなく「いい色になってきたな」になる。その違いは、最初の素材選びで決まるんです。
これから家づくりやリフォームをされる方の参考になれば嬉しいです。


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