前回は、大手・中堅・工務店という「会社のタイプ別の見方」を整理しました。
20年以上この仕事をしてきて、年数の経過した家に必ず発生するのが、家のメンテナンス、修繕です。修繕やメンテナンスが家の造りによって高額になるケースが多く、ちょうど子どもの学費が必要な時期と重なって、大変な思いをしている家庭をたくさん見てきました。
そこで、家はできるだけ将来にわたってお金がかかりにくく、家を長く持たせることを最優先に考えると、実は住宅メーカーのタイプよりも先に見ておきたい、もっと大事な”軸”があるんです。
それは、シンプルに言うと——「この家は、物理的にちゃんと守られるのか?」という視点です。
どんなにデザインが素敵でも、設備が豪華でも、家そのものがダメージで傷んでしまえば、長持ちはしません。そして家に致命的なダメージを与える二大要因が、雨とシロアリなんですね。
今回は、長持ちする家のために本当に見るべきポイントを、雨・シロアリ・屋根・メンテナンスという順番で、やさしく整理していきます。少し長くなりますが、ここを押さえると会社選びの軸がぐっと定まりますよ。
長持ちの土台①:まず「雨」から家を守れるか
家を傷める最大の原因は、やはり雨です。雨漏りはもちろん、外壁が常に雨にさらされ続けることでも、家は少しずつ傷んでいきます。
ここで多くの方が誤解しやすいのが、「良い外壁材を使えば雨は防げる」という考え方です。もちろん外壁材の質も大事なのですが、それだけでは不十分なんですね。
本当に効くのは、そもそも外壁に雨を当てない設計——つまり軒(のき)をしっかり出すことです。軒が深ければ、外壁やサッシまわりに当たる雨の量が減り、結果として雨漏りや劣化のリスクそのものを下げられます。神社やお寺が何百年も持っているのは、深い軒で建物を雨から守っているからなんですね。(このあたりは軒の出が家を100年もたせるの記事で詳しくお話ししています)
外壁材のグレードを上げることばかりに目がいきがちですが、「雨を当てない設計になっているか」を先に見る。これが長持ちの第一歩です。
できれば、外壁材のグレードも大事ですが、私の体感ベースでは軒の出をしっかり出すこと(可能ならメインの屋根の軒の出は90cm以上あると◎)で、築年数10年を超えても外壁の劣化具合が非常に少ない傾向にあります。軒の出があまりない家の給湯設備の裏側の外壁は、住宅メーカーが長持ちするといっていた外壁でも、汚れがひどくなっており、苔が生えてしまっている家もたくさん見てきました。
外装は修繕にとても大きな費用がかかるので、十分なチェックが必要です。
長持ちの土台②:「シロアリ」に強い造りになっているか
雨と並ぶもう一つの大敵が、シロアリです。木造住宅にとっては、構造そのものを食い荒らされる、本当に怖い存在なんですね。
シロアリ対策で見ておきたいのは、次の3つです。
- 被害に遭いにくい基礎工事になっているか
- 防蟻(ぼうぎ)処理が、なるべく長持ちするものか
- 将来、点検がしやすい構造になっているか
特に見落とされやすいのが、3つ目の「点検のしやすさ」です。一般的な防蟻処理の薬剤は、だいたい5年ほどで効果が切れると言われています。つまり、建てて終わりではなく、定期的な点検と再処理が前提なんですね。
ベタ基礎なら絶対安心、というわけでもありません。床下が湿気のこもりやすい環境だと、シロアリを呼び寄せてしまうこともあります。だからこそ、「床下にもぐって点検・処理がしやすい構造か」が、長い目で見たときに効いてくるんです。(防蟻処理の考え方は家の足元を守る3つの選択の記事で詳しく触れています)
上記の記事では、ホウ酸系の防蟻処理剤の紹介もしていますが、その考え方も大切です。一般的な農薬系の防蟻処理だと、5〜10年ごとの再処理で30万円以上かかることもあり、その積み重ねを抑えられる家を目指すのがとても大事になります。
長持ちの土台③:「屋根」で致命傷を負わないか
外壁と並んで、家を守る最前線が屋根です。屋根が深刻なダメージを受けると、雨漏りから一気に家全体の劣化につながり、致命的になりかねません。
長持ちという視点で屋根材を考えると、選び方には順番があります。
- いちばん長持ちを狙うなら「陶器系の瓦」:耐用年数は50年以上とも言われ、塗り直しも基本的に不要。初期費用は高めですが、長い目で見ればメンテ費用を抑えやすいです
- 次に、メンテが容易な「ガルバリウム鋼板」:立地や塩害などの環境にもよりますが、30年前後が目安。錆びにも比較的強く、塗装などのメンテ頻度も少なめです。軽くて地震にも有利ですが、条件によっては15〜30年ほどで傷みが出ることもあります
- 避けたいのは「スレート系」:初期費用は安いものの、一般には25〜30年とされ、環境によっては10〜20年ほどで割れや劣化が出やすいです。塗装に加えて、劣化が進むとカバー工法といった大きな修繕が必要になり、費用も高額になりがちです
もちろん、デザインや予算との兼ね合いもあります。ただ、「長持ち特化(瓦)」か「メンテが容易な素材(ガルバ)」かという軸で考えると、後悔が少ないと思います。屋根は普段見えないぶん、つい後回しにされがちですが、長持ちを考えるなら最優先で見ておきたい部分なんですね。(屋根材の選び方は屋根材で迷ったら知っておきたい3つの選択肢の記事もどうぞ)
設備は「最少で快適に」が、長持ちのカギ
ここまでは「家を守る」話でしたが、長く住み続けることを考えると、もう一つ大事な視点があります。それが、設備を増やしすぎないことです。
最新の住宅設備や空調システムは魅力的ですよね。でも、機械はいつか必ず壊れます。設備をたくさん入れるほど、10年・20年と経つうちに、交換やメンテナンスの費用が次々とのしかかってくるんです。
実は、設備に頼らなくても、断熱や間取りの工夫で十分に暖かく・涼しく暮らせることは多いんですね。夏は軒の出で日ざしを遮り、冬は日ざしを取り込む。そんな設計と断熱のバランスがとれていれば、最少の空調設備でも快適に暮らせます。
「いかに設備を盛るか」ではなく、「最少の設備で快適に暮らせる提案をしてくれるか」。これは、住んでからの維持費を大きく左右する、とても大事な視点です。いずれにしても設備が多すぎると、将来その家を維持すること自体が負担になってしまいます。
実際に当社へのリフォームの問い合わせでも、他社で建てた家に全館空調、床暖房がついており、故障したため修理を依頼したところ、「修理、交換で100万円を超える費用がかかる」、「同タイプの設備が廃盤のため、かなりの部分の入れ替えをするのに200万円以上費用がかかる」といった相談があります。
全ての設備は【いずれ故障する】、【修理や交換が必要】、という視点を持つことがとても大事だと思っています。
内装も「補修・交換のしやすさ」で選ぶ
意外と見落とされがちなのが、内装です。
壁紙や床材も、年数が経てば必ず傷んだり汚れたりします。このとき、特殊な素材や、廃番になりやすいものを使っていると、いざ補修というときに「同じものが手に入らない」「直すのに高くつく」ということが起こります。
ですので、内装についても、できるだけ補修・交換がしやすい、一般的で手に入りやすいものを提案してくれるかを見ておくと安心です。見た目の特別感より、長く付き合えるかどうか。ここを大事にしてくれる会社は、長持ちへの理解がある会社だと思います。
点検・アフター・「適正価格の修繕」が効いてくる
家は建てて終わりではなく、住みながら手入れをして長持ちさせていくものです。だからこそ、点検やアフターの体制は、長持ちを左右する大きな要素になります。
ここで特に注意したいのが、「自社オリジナルの仕様・設備」です。
一見、魅力的に見える独自仕様。ですが、これが落とし穴になることもあります。たとえば——
- 自社オリジナル品であることを理由に、メンテナンス費用が高額になる
- 年数が経つと修理できる部品がなくなり、結局大掛かりな入れ替えが必要になる
つまり、特殊な仕様ほど、将来の選択肢が狭まりやすいんですね。長持ちを重視するなら、「その設備や部材に、代わりになるもの(代替品)はあるのか」という視点を持っておくと安心です。
実際に、独自の全館空調設備や、構造の内部に熱環境をコントロールする特殊設備を入れた家の修繕相談では、修理や交換をするのが高額になるため、普通のエアコンを増設して対応し、既存の設備は撤去しない選択をする事例も出てくるほどです。
理想は、どのタイミングで何が傷んでも、適切な修繕を、適正な価格でしてくれること。派手な保証や独自設備より、この”地に足のついた対応力”こそ、長く住む家には欠かせないんです。これは【本当に大事な視点】だと私は思っています。
「保証の長さ」に惑わされないために
最後に、保証についても一言。
「○○年保証」と、とても長い保証をうたう会社があります。安心材料にはなりますが、ここで気をつけたいことがあります。
長い保証を見て、「どんなトラブルでも全部保証してくれる」と思い込んでしまう方が、とても多いんです。でも実際は——
- 定期点検や、有償のメンテナンス工事を受けることが条件になっている
- 保証の対象が構造など一部に限られていることが多い
というケースがほとんどです。正直なところ、営業担当者自身も保証の細かい中身を把握していないことすらあります。
ですので、保証は「年数の長さ」で判断せず、「何が・どんな条件で保証されるのか」という中身を確認することが大切です。(会社ごとの保証の違いは住宅会社の選び方の記事でも触れています)
ここまでが「長持ちの軸」。次はタイプ別に当てはめます
今回お伝えしてきた——雨・シロアリ・屋根・最少設備・内装のメンテ性・点検アフター・保証の中身。これらは、どの会社で建てるとしても共通して見るべき「長持ちの軸」です。
そして実は、この軸を大手・中堅・工務店それぞれに当てはめてみると、選び方や、会社に伝えるべきことが変わってきます。「長持ちを最優先にするなら、それぞれのタイプをどう選び、何を伝えればいいのか」——そこは、次の記事でじっくりお話ししますね。
おわりに
長持ちする家は、派手な設備やデザインではなく、雨とシロアリから家を守り、メンテナンスしやすく整えておくことから生まれます。地味に見えるかもしれませんが、20年・30年と住み続けたときに、その差は本当に大きく出てきます。
会社を選ぶときも、「タイプ」や「価格」だけでなく、こうした長持ちの軸にどれだけ向き合ってくれるかを見ていただけたらと思います。それが、住んでから「お金で大変な思いをしない家」への、いちばんの近道なんですよね。
これから家づくり・リフォームをされる方の参考になれば嬉しいです。


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