高気密・高断熱の家が当たり前になって、第一種換気(熱交換型の24時間換気)はすっかり人気の設備になりましたよね。カタログには「冷暖房の熱を逃がさない」「きれいな空気」と、良いことがたくさん書かれています。
でも正直にお話しすると、私自身の自宅は第三種換気(シンプルな換気)なんです。
設計者として何棟もの家に関わって、第一種換気の”その後”——フィルター掃除や故障、電気代——を見てきたうえで、自分の家ではあえて第三種を選びました。この記事では、売る側があまり語らない「導入したあとにかかる手間とお金」を、できるだけ正直にお話ししますね。
そもそも第一種換気とは?第三種換気との違い
24時間換気は法律で義務づけられていて、大きく分けて第一種と第三種があります。
ざっくり言うと、第三種は「排気だけを換気扇で行い、給気は自然に任せる」シンプルなしくみ。第一種は「給気も排気も機械で行い、さらに”熱交換”で、出ていく空気の温度を、入ってくる空気に移してから捨てる」高機能なしくみです。
第一種のほうが、冬に冷たい外気がそのまま入ってこない・夏の暑い空気がやわらぐ、という快適さがあります。ただ、しくみが複雑なぶん初期費用は約50万円〜と第三種より高く、後々の手間も増えていくんです(2026年時点)。
ここからは、その”後々の手間”を一つずつ見ていきましょう。
フィルター掃除が想像以上に大変
まず一番身近なのがフィルター掃除です。
第一種換気は給気も機械で行うので、外の空気を取り込む側にもフィルターが付いています。24時間ずっと外気を吸い続けているので、これが本当によく汚れるんですよね。
実際にお客様の家で見ると、ホコリがびっしり付いているのはもちろん、虫の死骸が結構ついていることも珍しくありません。場所も天井近くや本体の中だったりして、掃除はなかなかの重労働なんです。
メーカーの目安では、給排気口のフィルターは2〜3ヶ月に1回、高性能フィルターは1〜2年で交換(1枚5,000〜15,000円ほど)とされています。「2〜3ヶ月に1回」と聞くと軽く感じますが、これを何年も続けるのは思った以上に根気がいりますよ。
ダクトの汚れと「匂い」の問題
第一種換気には、天井裏にダクト(空気の通り道の管)を張り巡らせる「ダクト式」が多くあります。
ネットでも「ダクトの中はカビるんじゃないか」という不安の声をよく見かけますよね。実際のところ、私が関わった物件では導入が増えてからまだ7〜8年ほどなので、深刻なカビの大トラブルはまだ経験していません。ただ、ダクトの汚れや、多少の匂いが気になるという声は聞くようになってきました。
ダクトは家の中に埋まっているので、汚れても手軽には掃除できません。専門業者にダクト清掃を頼むと、数万円〜場合によっては20万円ほどかかることもあります(2026年時点)。第三種のシンプルな換気にはない、第一種ならではの将来コストなんですね。
壊れたとき・交換のリアルな将来コスト
そして一番考えておきたいのが「壊れたとき」です。
24時間換気の本体は、寿命がおよそ10年といわれます。中の熱交換素子も5〜10年で交換が推奨されることがあり、これも数万円。さらに、修理用の部品をメーカーが持っている期間は、製品の区分によって違いますが、換気システムだと製造終了後6年程度とされることもあります。
正直にお伝えすると、私の関わった物件では一種換気を入れ始めてまだ7〜8年なので、「本体まるごと全交換」になった家はまだありません。でも、その時間軸は確実にやってきます。
参考までに、30年間のメンテナンス費用を比べた試算では、第一種は約138万円、第三種は約35万円で、その差は約100万円というデータもあります(2026年時点)。設備は「導入時の値段」より「10年後・20年後にいくらかかるか」で家計に効いてきます。家全体で30年にどれくらいメンテナンス費用がかかるかは、築年数別のメンテナンス費用をまとめた記事でも詳しく触れていますので、よかったらチェックしてみてくださいね。
これは全館空調の交換費用や太陽光、床暖房とまったく同じ構図なんですよね。便利で快適な設備ほど、後からの出費が大きくなりやすいんです。
電気代は意外とかかる
ここまで読んで、「いっそスイッチを切ってしまおうか」と頭をよぎった方もいるかもしれません。ただ、止めた家に何が起きるかは家の作りによってかなり差があるんです。その分かれ目は24時間換気を止めるとどうなるかを実例でまとめた記事に書いたので、スイッチに手が伸びる前にのぞいてみてください。
見落とされがちなのが電気代です。
第一種換気は給気・排気の両方をモーターで動かし続けるので、第三種より電気を使います。目安は月500〜1,500円ほどとされますが、実際に住んでいる方から「思ったより電気代がかかる気がする」という声を聞くことがあるんです。
「熱交換で冷暖房費が下がるからトータルでお得」と説明されることが多いのですが、換気そのものの電気代・フィルター代・将来の交換費まで含めると、その元が取れるかは住む地域や暮らし方しだい、というのが正直なところですね。
見落としがちな「音」の落とし穴
意外と知られていないのが、給気口・排気口から音が漏れる、という点です。
ふだんは意識しないと気づかない程度なのですが、第一種換気は外と室内が給排気口でつながっているので、室内の音が思った以上に外へ漏れたり、その逆があったりします。これは私自身が現場で体感したことです。窓・間取り・換気ダクトと音の関係をまとめた記事でも触れていますが、換気の経路は音の通り道にもなるんですね。
幸い、私の地域では40〜50坪以下の狭小地の物件がほとんどなく、隣家との距離を取りやすいので大きな問題にはなりにくいです。それでも一つ気をつけたいのが、隣の家が近く、しかもその家が窓を開けて過ごす場所のすぐ近くに、給排気口を持ってこない、という配置の配慮なんですね。
最近は窓を開けて暮らすご家庭自体が減ってきたので、そこまで神経質になる必要はありません。ただ、敷地が狭めだったりお隣との距離が近い土地では、設計の段階で給排気口の位置を一言相談しておくと安心ですよ。
それでも入れたいか?第三種でも十分という設計者の本音
ここまで手間とお金の話ばかりしてきましたが、第一種換気を否定したいわけではありません。
冷暖房の効いた空気を逃がしにくく、花粉やホコリを入り口でフィルターできる快適さは確かに魅力です。「多少お金と手間がかかっても、その快適さが欲しい」という方には、十分に価値のある設備だと思います。
ただお伝えしたいのは——フィルター掃除・ダクトの汚れ・故障時の交換・電気代という”将来の負担”をぜんぶ引き受けてでも、熱交換の換気が欲しいか、という視点でしっかり考えてほしい、ということなんです。
私自身は、断熱の考え方をまとめた記事でもお伝えしているように、断熱・内装・窓・間取りといった家の基本性能をしっかり作り込めば、シンプルな第三種換気でも快適に暮らせると考えています。実際、私の自宅は第三種ですが、不便を感じたことはありません。
換気は「高機能なほど良い」ではなく、「暮らしと将来の手間に合っているか」で選ぶもの。設備を足す前に、まず家そのものの性能を整える——これが、長く快適に住むための一番の近道だと思いますよ。
おわりに
第一種換気は、快適さと引き換えに、掃除・メンテナンス・交換という”将来の宿題”がついてくる設備です。
大事なのは、良し悪しではなく「自分の暮らしに合っているか」。導入を検討するなら、ぜひ「10年後・20年後にどんな手間とお金がかかるか」まで、住宅会社に具体的に聞いてみてくださいね。
よくある質問
Q1. 第一種換気と第三種換気、結局どちらがおすすめですか?
一概には言えません。第一種は快適ですが手間とコストがかかり、第三種はシンプルでメンテも安価です。断熱や間取りをしっかり作れば第三種でも快適に暮らせるので、「将来の手間まで含めて納得できるか」で選ぶのがおすすめです。
Q2. 第一種換気のダクトはカビませんか?
適切にメンテナンスしていれば、すぐカビだらけになるわけではありません。ただダクトは家に埋まっていて手軽に掃除できず、数年で汚れや匂いの声も出てきます。掃除を業者に頼むと数万円〜かかる点は知っておきましょう。
Q3. フィルター掃除はどのくらいの頻度で必要ですか?
給排気口のフィルターは2〜3ヶ月に1回の掃除、高性能フィルターは1〜2年での交換が目安です。常時外気を吸うのでよく汚れ、虫の死骸が付くことも。手間を負担に感じないか、事前にイメージしておくと安心です。


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