平屋で後悔する人・しない人の違いを住宅の専門家が解説

間取り
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この記事でわかること

  • 27坪で7年以上満足が続いている平屋の実例
  • 設計者が「平屋はやめましょう」と止めた3つのケース
  • 暗さ・音は設計で解決できる、水害・土地の広さはできない
  • 建てる前に確かめる順番

平屋で後悔するかどうかは、実は建物そのものではなく「土地と暮らしの条件合わせ」でほぼ決まります。

私は年間60〜80棟規模の新築・リフォームに関わる住宅会社で設計と営業をしていますが、平屋をお勧めしたお客さんもいれば、「やめておきましょう」とお止めしたお客さんもいるんです。この記事では、その両方の実例をお話しします。

ちなみに平屋は今、本当に増えています。国土交通省の建築着工統計調査をもとにした集計では、新築戸建てに占める平屋の割合は2013年度の約7%から2023年度には約15%と、10年で2倍以上になりました。

人気だからこそ「うちも平屋にできるかな」と迷いますし、「後悔」「やめとけ」なんて言葉を見ると不安になりますよね。読み終わるころには、ご自身がどちら側なのか判断できる物差しをお渡しします。

27坪で大満足の平屋、実際にあるんです

まず成功例からお話しさせてください。ご夫婦とお子さん1人の3人家族で、コストを抑えつつ将来を見据えて平屋を選んだお宅です。

延床は27坪ほど。それでLDKが20帖弱、和室6帖、書斎コーナー、クローゼットに納戸、パントリーまでしっかり入りました。

なぜ入ったかというと、階段がないからです。2階建てだと階段だけで1階と2階あわせて2坪(約4帖)、さらに階段前後の廊下で1〜2帖使うので、合計5〜6帖分にもなります。平屋なら、それを丸ごと部屋に回せるんです。

このお宅は築7〜8年になりますが、今も「十分満足している」と言ってくださっています。建てた直後ではなく、住み続けたうえでの満足。設計をした側としては、これが一番うれしい言葉だったりします。

とはいえ、平屋は割高です

正直に言うと、同じ延床面積で比べたら平屋は2階建てより高いです。私の現場感覚では1〜1.5割ほど。

基礎と屋根の面積が2階建てのほぼ倍になるためで、これはどの会社で建てても避けられません(金額差は地域や仕様で変わります)。

でも、さっきの27坪の話を思い出してください。平屋は階段と廊下を削れる分、同じ部屋数なら2階建てより小さい坪数で建てられます。坪単価は高くても、掛け算のもとになる坪数が減るので、総額では逆転することもあるんです。

「平屋は高い」も「平屋はコスパがいい」も、どちらも本当。分かれ目は間取りの作り方です。

私が「平屋はやめましょう」とお止めしたケース

一方で、平屋をご希望のお客さんに2階建てをお勧めしたことも何度もあります。振り返ると理由は3つに絞られます。

1つ目は、2世帯またはそれに近い構成で暮らす場合。全員の部屋が同じ階に並ぶので、生活音や気配といったプライバシーの確保がとても難しいんです。

しかも人数分の部屋を平屋で取ろうとすると建物が大きくなり、今度は窓の取れない部屋ができるリスクが出てきます。建物の形を工夫して解決しようとすると、感覚としては100坪以上の土地が欲しくなります。

2つ目は、土地が狭いケース。無理に平屋を載せると敷地の余白がなくなって、庭も駐車場も窮屈になります。この場合は素直に2階建てのほうが暮らしやすいです。

3つ目は、市街地で「1階で寝るのが怖い」と感じる方。平屋は寝室も必ず1階です。防犯の不安が消えない方には、設備でカバーするより2階建てをお勧めしています。

設計で解決できる後悔——暗さと音

「平屋は暗い」「プライバシーがない」という声も多いのですが、この2つは設計でかなり解決できます。

平屋が暗くなりやすいのは、建物が正方形に近い形のとき。外周の窓から遠い中央部分に、どうしても光が届きにくいんです。

そこでよく使うのが、天井近くの横長スリットFIX窓。実例では、北側に配置したキッチンにこの窓をつけたところ、反射光の効果もあってかなり明るくなりました。天井面が明るいと、人は思った以上に「この部屋は明るい」と感じるんです。

ほかにも、屋根の形で高い位置から光を入れたり、明るさの要らない収納や水まわりを中央に寄せたりという手があります。

音とプライバシーは、部屋の配置で守ります。リビングの隣にいきなり寝室を置かず、間に収納を挟んで音をやわらげる。子ども部屋と寝室は対角に離す。全部屋が同じ階にある平屋だからこそ、この一手間が効いてきます。

部屋の配置や動線をどう考えるかは、平屋に限らず家づくり全体に効いてくる話です。長持ちする間取りのヒントにまとめているので、間取りを考え始めた方はのぞいてみてください。

設計では解決できない後悔——水害と土地の広さ

逆に、間取りの工夫ではどうにもならないものが2つあります。

1つは水害です。平屋には「2階に逃げる」という選択肢がありません。

注意:平屋を検討するなら、ハザードマップだけでなく、市町村がまとめている過去の浸水実績の資料まで確認しておくのがおすすめです。

実際、ハザードマップ上は一定のリスクがあるエリアでどうしても土地を探したい方が、浸水実績を確認したうえで購入を決断されたことがあります。逆に、実績を見て見送った方もいます。

リスクが高そうな土地なら、2階建てにするか、一部の部屋だけ2階に上げる「ほぼ平屋」という選択をお勧めしています。水害を含めた災害への備え全体は、災害に強い家の考え方で土地選びの段階から整理しています。土地から探している方は、先にこちらを読んでおくと安心ですよ。

もう1つは土地の広さ。車をお持ちなら、平屋には最低でも70坪は欲しいというのが私の感覚です。しかもこれは土地の形がきれいな場合の話で、いびつな形の土地ならもう少し必要になります。

土地の見方そのものに不安がある方は、土地選びの基本の見方から始めてみてください。建てられる家の大きさは建ぺい率・容積率でも変わってくるので、平屋を考えるならこの2つはセットで押さえたいところです。

平屋が向いている人・2階建てが向いている人

平屋が向いている人2階建てが向いている人
3〜4人までの家族構成2世帯など人数・部屋数が多い
整形地で70坪以上を確保できる土地が狭い・変形している
水害リスクの低い土地浸水リスクが気になる土地
ワンフロアの暮らしやすさ重視1階で寝ることに不安がある

よくある質問

トイレは1つだと後悔しますか?

27坪前後の平屋なら、1つで困らないお宅が多いです。ただ、寝室とLDKが対角にある間取りや、朝の時間帯が家族で重なるご家庭なら2つをお勧めします。あとから増やすより建築時が一番安く済みます。

老後のために平屋にするのはありですか?

階段のない暮らしは、老後の安心材料として確かに大きいです。ただ「老後のため」だけで今の暮らしに合わない間取りにすると本末転倒なので、「今も老後も使える間取りか」で判断してみてください。

平屋は固定資産税が高いと聞きました

同じ広さなら、屋根や基礎が大きい分だけ建物の評価がやや高くなる傾向はあります。ただ平屋は坪数自体を抑えやすいので、トータルでは変わらない、むしろ安くなるケースもあります。評価は自治体や仕様によるので、目安として捉えてください。

虫が多いって本当ですか?

どの部屋も地面に近いので、2階建ての2階と比べれば虫との距離は近くなります。基礎まわりの防蟻処理や網戸・給気口まわりの対策で、実用上は困らないレベルにできますよ。

おわりに

平屋の後悔は、「平屋を選んだこと」からではなく、土地と暮らしの条件を確かめないまま進めたところから生まれます。

27坪で7年以上満足が続いている家があるように、条件さえ合えば平屋はコストパフォーマンスのいい選択です。逆に、条件が合わないのに憧れだけで進めると、割高な買い物になってしまいます。

もし今「平屋にしたいな」と思っているなら、間取りを考える前に、まず土地の広さと水害リスクだけ先に確かめてみてください。その順番さえ守れば、平屋は長く付き合えるいい相棒になってくれますよ。

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