制震ダンパーは必要か?自宅に付けた判断まで住宅の専門家が解説

耐震
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この記事でわかること

  • 耐震と制震の役割の違い(熊本地震が教えてくれたこと)
  • 制震ダンパーを付けた人・付けなかった人の実例
  • 費用感(ゴム系で20〜30万円程度)
  • 「制震は書類に出ない」という正直な注意点

「制震ダンパーは意味ない」「いや、必要だ」——調べるほど分からなくなりますよね。無理もありません。検索して出てくる記事の多くは、ダンパーを作っている会社のものですから。

先に私の答えを言います。私は自宅に制震ダンパーを付けました。でも、同じ会社のスタッフには付けなかった人もいます。

年間60〜80棟規模の新築・リフォームに関わる住宅会社で設計と営業をしている、いわばプロの集団でも判断が分かれる。制震ダンパーとは、そういう装備なんです。

だからこの記事は「付けるべき」でも「意味ない」でもなく、あなたが自分で判断できる材料をお渡しします。

耐震と制震は、守り方が違う

まず役割の整理から。耐震は、地震の力に「耐える」考え方です。壁や柱を強くして、倒壊しないように踏ん張る。家づくりの基本で、耐震等級はこの強さの目安です。

制震は、揺れを「制御する」考え方。ダンパーという装置が揺れのエネルギーを吸収して、建物が受けるダメージそのものを減らします。

耐震制震
守り方強い壁と柱で「耐える」揺れを吸収して「ダメージを減らす」
得意なこと倒壊を防ぐ繰り返しの揺れに強い
公的な書類耐震等級として明記される等級のような書類にはならない

この違いが現実になったのが、2016年の熊本地震でした。観測史上初めて、同じ地点で震度7が2回起きたんです。国土交通省の調査報告では、前震では軽い被害だった家が本震で倒壊した事例が多数報告されていて、耐震等級2の住宅でも倒壊した例がありました。

「一発の大きな揺れに耐える」だけでなく、「繰り返しの揺れでダメージを溜めない」。制震ダンパーの出番は、ここにあります。

タイプは大きく3つ——当社がゴム系を選んだ理由

制震ダンパーには、大きくオイル系・ゴム系・鋼材系があります。エネルギーの吸収の仕方と価格帯がそれぞれ違い、メーカーごとに製品名で売られています(ゴム系なら住友ゴムのミライエ、オイル系ならevoltzなど、検索するとたくさん出てきます)。

当社では、コストと施工負担のバランスから高額なタイプは外して、ゴム系を採用しています。

どのタイプが優れているかは一概に言えません。多くのメーカーが実験の様子を動画で公開しているので、提案された製品の実験動画を見せてもらうのが、一番納得感のある確かめ方だと思います。

付けた人・付けなかった人——現場の実例

当社でダンパーを付けた方は、大きく2タイプに分かれます。

1つ目は、もともと耐震への意識が高い方。等級3をしっかり取ったうえで、「さらに安心を上乗せしたい」と追加するケースです。

2つ目は、間取りや空間を優先した結果、等級3にならなかった家。大きな窓や吹き抜けをあきらめたくない事情があるとき、念のための安心材料としてダンパーで補うケースです。実は、私の自宅がこれでした。等級3にならなかったので、迷った末に付けました。

一方で、付けなかった方も大勢います。等級3が取れていれば十分と考える方。お住まいの地域で想定される地震のリスクを踏まえて、なしと判断する方。どちらも合理的な判断だと思います。

未来の地震は、誰にも予知できません。だから私は「この家にはいりません」とも「絶対に付けるべき」とも断定せず、判断材料をお渡しして、お客さんの判断を優先するようにしています。

費用感——20万円台から

当社が採用しているゴム系タイプの場合、平均的な大きさの家で工事費込み20〜30万円程度です(製品や会社、家の大きさで変わります)。

もっと高性能で高額なタイプもありますが、新築でバランスよく選ぶなら、この価格帯から検討できると知っておくと目安になると思います。

正直な注意点——制震は「書類に出ない」

1つ、正直にお伝えしたいことがあります。制震ダンパーの効果は、耐震等級のように公的な数値や書類になりません

注意:性能評価書に「制震等級」という欄はなく、地震保険の割引も耐震等級ベースです。ダンパーを付けたからといって、等級が上がるわけではありません。

だから、順番を間違えないでください。まず耐震等級、制震はその上の安心の上乗せです。等級の確かめ方は前回書いた通り、「相当」という言葉に気をつけて、構造計算と耐震等級3相当の記事を参考に書類で確認してくださいね。

よくある質問

何本くらい、どこに付けるものですか?

家の形や大きさに合わせて、設計時に配置を計算して決めます。「とりあえず4本」のような付け方をするものではないので、提案時に配置図を見せてもらってください。

あとから付けられますか?

後付けに対応した製品もあります。ただ、壁を開ける工事が必要になるなど、新築時とは条件がだいぶ変わります。リフォームでの耐震強化は話が別枠になるので、いずれ改めて書きますね。

等級1や2の家でも意味はありますか?

あります。事情があって等級を上げられない家こそ、揺れのダメージを減らす装置の意味は大きくなります。ただし「等級を上げられるなら、上げるのが先」という順番は変わりません。

メンテナンスや寿命はどうなっていますか?

製品によって耐用年数や保証がかなり違います。素材(ゴム系・オイル系など)によっても考え方が変わるので、提案時に「保証年数とメンテナンスの要否」をセットで確認するのがおすすめです。

おわりに

地震が来るかどうかは、誰にもわかりません。だから制震ダンパーは「正解のある買い物」ではなく、「いくらまでなら安心に払えるか」というあなたの物差しで決めていい買い物です。

等級3の上に、さらに安心がほしい。あるいは、事情があって等級3にできない分を補いたい。どちらかに当てはまるなら、20〜30万円程の価値は十分あると私は思っています——自宅に付けた身としては。

当てはまらないなら、無理に付けなくて大丈夫。プロの間でも判断が分かれるくらいですから、あなたの判断を信じていいんですよ。

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