断熱等級はどこまで必要?6で十分な理由を住宅の専門家が解説

断熱
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この記事でわかること

  • 断熱等級とUA値の早見表(基準は地域で変わる)
  • 等級5→6は50〜100万円、7なら200〜400万円という現場感覚
  • 数字が立派でも「夏暑い家」ができてしまう理由
  • C値(気密)の本音と、どこまで必要かの判断軸

「断熱等級は6にすべき?7まで上げるべき?」——先に私の答えを言うと、4地域より温暖なエリアなら、設計の工夫とセットの等級6で十分です。

実を言うと、ほんの少し前まで、私は「5で十分」と思っていました。実際、等級5の水準で建てたお家で、みなさん十分快適に暮らしています。

それでも今は6をおすすめしています。補助金の基準や省エネの流れなど、時代の変化を考えると、これから建てる家は6にしておくのが良い——そう考えが変わったからです。

私は年間60〜80棟規模の新築・リフォームに関わる住宅会社で設計と営業をしていて、当社も等級6を標準仕様にしています。この記事では、等級を上げるのに実際いくらかかるか、そして数字では買えないものが何か、業界の内側の事情まで含めてお話しします。読み終わるころには、営業トークの数字に振り回されない物差しが手に入るはずです。

断熱等級とUA値の関係を、最短で

断熱等級は1〜7の7段階。その主役になっているのがUA値という数値で、家の表面からどれだけ熱が逃げやすいかを表します。小さいほど高断熱です。

温暖な地域(6地域=東京・大阪など)の基準値はこうなっています(出典:国土交通省・省エネ性能表示制度)。

等級UA値の基準(6地域)位置づけ
等級40.87以下2025年からの最低ライン
等級50.60以下ZEH水準
等級60.46以下2022年新設
等級70.26以下2022年新設・最高等級

注意したいのは、基準値は地域区分(1〜8地域)で変わること。同じ「等級6」でも、北海道と東京では求められる数値がまったく別物です。

そして等級の確かめ方は、住宅性能評価書や設計図書の外皮計算書です。「等級6相当」という言い方が断熱の世界にもありますが、耐震のときとまったく同じで、書類で確認するのが確実です。確かめ方の考え方は耐震等級3相当の記事で書いた通りです。

等級を上げると、いくらかかる?

当社の実例でお話しします。等級5を目安にしていた時代のUA値は0.45〜0.55ほどでした。窓をトリプルガラスに替え、断熱材を変更して、いまは0.35〜0.45。この引き上げにかかった費用の感覚は、1棟あたり50〜100万円です。

じゃあ等級7は?というと、全棟で余裕を持ってクリアできる水準を目指すなら、断熱材の種類にもよりますが200〜400万円かかる感覚です。一部の家がたまたま届くのと、全棟で安定して出せるのとでは、必要な水準がまるで違うんですね。

ここで1つ、内側の話をします。実は数値だけ良くするなら、もっと安くできるケースもあるんです。

注意:平屋は計算の仕組み上、UA値が良く出る傾向があります。同じ断熱仕様でも間取りや家の形で数値は変わるので、「等級6相当」という言葉の中身は会社によって、家によって違います。

数字が同じでも、中身が同じとは限らない。だからこそ、あなたの家の計算書を見せてもらうことに意味があるんです。

数字が立派でも、夏暑い家はある

ここがこの記事でいちばん伝えたいことです。

UA値が測っているのは「熱の逃げにくさ」。夏の日射がどれだけ窓から入るかは、実は別の数値(ηAC値)の話で、等級の会話ではほとんど話題になりません。

当社には一昔前の基準の建物や展示場があります。UA値でいえば0.6〜0.8程度。でも夏、思った以上に涼しいんです。1階南面の軒をしっかり出して日射を遮り、西側の窓を絞る設計を昔からやってきたからです。冬もエアコン1〜2台で十分暖かい。

逆の光景も、たくさん見てきました。性能を売りにした家の南の窓に、シェードやすだれ、よしずが掛かっている。軒が短いと真夏の日射が窓から入り放題で、数字がどれだけ良くても窓辺は暑くなるんです。

数字を買っても、設計を買わないとこうなる。軒の出がどれだけ家を守ってくれるかは、このブログの原点として軒の出が家を100年もたせる話に書いています。断熱を考えるなら、セットでぜひ。

C値(気密)の本音

気密性を表すC値には、UA値のような国の等級がありません。だから余計に「C値競争」になりやすい数字です。

当社の運用を正直に言うと、気密測定は任意で、やる場合は外部の機関に依頼しています。自社で測ると、正直いくらでも操作ができてしまうからです。実測では0.4〜0.8くらいが出ています。

体感としては、ランダムに測って1以下が安定して出る施工ができていれば、暮らしの上で問題を感じたことはありません。一昔前の建物は測定していないので正確なところは分かりませんが、おそらくC値1〜2程度ではないかと思います。それでも冬はエアコン2台で十分暖かいんです。超高気密の競争までは要らない、というのが私の実感です。

もしC値を重視するなら、数字そのものより「外部測定に対応できる会社かどうか」を信用の物差しにしてください。対応できる会社は、施工に自信がある会社です。

で、どこまで必要?——私の判断軸

まとめます。4地域より温暖なエリアで、軒・日射遮蔽・窓の設計がしっかりできる会社なら、等級6で十分です。

冒頭でお話しした通り、「5でも暮らしは十分快適」という体感は今もあります。それでも6をおすすめする理由は3つ。①省エネ基準は今後も引き上げられていく流れで、補助金や優遇の条件も年々上がっていくこと。②将来売るときの評価に響くこと。③長く住むほど、光熱費の差で回収できることです。

長持ちする家とは、修繕費がかかりにくいだけでなく、住んでいる間のお金もかかりにくい家。断熱はその柱の1つですが、数字の競争に参加することとは違います。

なお、寒冷地(1〜3地域)は基準値も答えも変わります。この記事の結論をそのまま当てはめず、地元の会社の実感を聞いてください。

よくある質問

等級6にすると補助金はもらえますか?

断熱等級を条件にした補助金や優遇制度はありますが、内容と基準は年度ごとに変わります。「今年の制度で、等級6だと何が使えますか?」と会社に聞くのが一番確実です。

同じ会社・同じ仕様なら、UA値は同じになりますか?

変わります。間取り・家の形・平屋かどうかで数値は動きます。「標準でUA値◯◯」という説明より、あなたの家の外皮計算書を見せてもらうほうが確実です。

建売や中古の断熱等級は調べられますか?

2024年から広告への省エネ性能表示ラベルが始まっているので、まずそれを確認してください。性能評価書などの書類がなければ等級は分かりません。その場合は数字より、軒や窓の設計を見るのがおすすめです。

C値は測定してもらうべきですか?

気になるなら「外部機関の気密測定に対応できますか?」と聞いてみてください。対応できる会社なら、数字がいくつであれ施工に誠実な会社だと思います。

おわりに

断熱等級の数字は、家の快適さの一部を切り取った道具です。道具は使うものであって、振り回されるものではありません。

等級をもう1段買う50〜100万円の前に、軒と窓の設計がきちんと考えられているかを確かめる。その順番さえ守れば、数字と体感の両方がそろった、長く住むほど「暖かくて、お金のかからない家」になってくれますよ。

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