新築のエアコンは何台必要?「1台でまかなう家」と2台目を用意すべき理由を住宅の専門家が解説

住宅設備
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「高気密高断熱の家なら、エアコン1台で家中まかなえます」

そんな話を聞いて、うちもそれでいけるかな…と考えている方は多いと思います。実際、間取りの組み方しだいで1台でかなりいける家は作れます。

ただ、私は「1台だけ」の家はおすすめしていません。快適さの問題ではなく、もっと切実な理由があるんです。

そのあたりを、設計する側の本音でお話ししますね。

この記事でわかること

  • エアコン1台の家をおすすめしない理由
  • それでも「1台でだいたいまかなう家」は作れる
  • 2台目・3台目をどこに置くか
  • 今はいらない部屋にやっておくべき、たった1つの準備

「エアコン1台だけ」をおすすめしない理由は、故障です

いきなり現実的な話をします。

エアコンは、壊れます。

そして厄介なことに、エアコンが壊れるのは真夏か真冬です。フル稼働している時期に限界が来るんですね。しかもその時期は修理も混み合っていて、部品待ちで1週間、2週間と待たされることも珍しくありません。

真夏に、家中の冷房を担っていた1台が止まったらどうなるか。

ここ数年の夏は、我慢して乗り切れるレベルではなくなっています。快適さの問題ではなく、命に関わる話です。特に小さなお子さんや高齢のご家族がいるお宅では、なおさら考えておきたいところ。

私の結論
新築の冷暖房は、最低2台を前提に考えてください。「1台で足りる家」だとしても、2台目は保険として意味があります。

ただし「1台でだいたいまかなう」考え方は、とても良いです

誤解のないようにお伝えすると、「できるだけ少ない台数でいけるようにする」という発想自体は、私は賛成です。

台数が増えれば初期費用も交換費用も増えますし、掃除の手間も増えますからね。設備を減らせるならそのほうがいい。

そして、これは間取りでかなりコントロールできます。

メインの空間と、そこにつながる場所。リビングから続く水まわり、一部の居室、書斎コーナーのような小さなスペース。このあたりは、間取りの取り方と開け閉めしやすい引き戸を上手に使うことで、メインの1台でけっこういけるんです。

ドアを開けておけば空気が回り、閉めれば区切れる。この可変性が効きます。

知っておくと得すること
冬のほうが、1台でまかないやすいです。暖かい空気は自然に上へ広がっていく一方、冷たい空気は下にたまって遠くまで届きにくい。だから冷房のほうが難易度が高いんです。

「冬は1台で十分だったのに、夏になったら奥の部屋が暑い」というのは、この非対称から来ています。夏を基準に考えておくと失敗しません。

1台でうまくいっている平屋の実例

実際に、エアコン1台でやれている平屋のお宅があります。

うまくいっている理由ははっきりしていて、間取りがきれいにはまっていることと、エアコンの位置が家全体に空気を届けやすい構成になっていることです。狙って設計したことが、そのまま結果に出た形ですね。

平屋は上下階の移動がないぶん、1台方式と相性がいいのは確かです。

ただ、これは「条件が揃った家の話」だと正直にお伝えしておきます。同じ平屋でも、部屋が個室で細かく仕切られていたり、エアコンから見て奥まった場所があったりすれば、同じようにはいきません。

「平屋だから1台でいける」ではなく、「1台でいけるように間取りを組んだから、いけている」。順番が逆なんです。

だから家づくりの早い段階で、「エアコンは何台にしたいか」を設計者に伝えてください。間取りが決まってから台数を減らそうとしても、もう手遅れなんですよね。

2台目・3台目は、どこに置くか

では、追加する分はどこに置くか。考え方はシンプルです。

1つ目は、扉で仕切って使う個室。子ども部屋や寝室のように、閉めて過ごす時間が長い部屋です。閉めた瞬間に空調から切り離されるので、独立して考える必要があります。

2つ目は、物理的に空気が届かない部屋。メインのエアコンから遠い部屋、廊下を挟んだ先、階が違う場所。さきほど書いたとおり、特に冷気は届きにくいので、ここは夏を基準に判断します。

そして忘れてはいけないのが、冒頭の話です。2台目があれば、1台が壊れたときの避難場所になります。真夏に修理を待つ間、家族が集まって眠れる部屋があるかどうか。これは大きいですよ。

今はいらない部屋にも、コンセントだけは用意しておく

ここが、この記事で一番お伝えしたい実務の知恵かもしれません。

将来エアコンをつけることになりそうな部屋には、専用コンセントだけ先に用意しておいてください。

たとえば今は物置がわりに使っている部屋。子どもがまだ小さくて個室にしていない部屋。「今はいらないよね」で終わらせず、コンセントと配管用のスリーブだけ準備しておくんです。

理由は単純で、あとからだと高くつくから。壁に穴を開けて、配線を引いて、内装を直して…となると、新築時にやっておく場合とは比べものにならない手間になります。仕上げによっては、きれいに納まらないこともあります。

新築のときなら、追加はごくわずかな金額です。将来の選択肢を数千円から数万円で買っておけると考えれば、安いと思いませんか。

これは冷暖房計画のもう1つの意味でもあります。「今の暮らし」と「10年後の暮らし」は違いますからね。家族の人数も、部屋の使い方も変わっていく。長持ちする間取りの考え方をまとめた記事でも書きましたが、変化に対応できる余白を残しておくことが、結局は長く使える家につながります。

床下エアコン・小屋裏エアコンをどう考えるか

1台で家中をまかなう方法として、床下や小屋裏にエアコンを設置する手法もあります。ネットで調べると必ず出てくると思うので、私の考えもお伝えしておきますね。

床下エアコンは、施主さんのご希望で採用したことがあります。ちゃんと効きます。

ただ小屋裏エアコンのような手法については、私は積極的にはすすめていません。

理由は、難しいわりに再現性が取りにくいからです。エアコンを置くための小屋裏スペースやダクトの造り方は簡単ではなく、家の形が変わればうまくいく条件も変わります。どんな家でも同じ結果が出せるかというと、正直、そこまでの自信は持てません。

そして将来のメンテナンス。床下や小屋裏に据えた機械は、交換のときに苦労します。全館空調の交換費用をまとめた記事でも書きましたが、設備は「入れるとき」より「替えるとき」にお金と手間がかかるんです。

メインの1台でだいたいまかなえて、+1〜2台の予備があれば快適に暮らせる。それで足りるなら、大がかりな工事と将来のリスクを背負ってまで無理にやらなくてもいいのでは、というのが私の考えです。

もちろん、こだわりを持って採用される方を否定するつもりはありません。ただ提案する立場としては、リスクとリターンの両方をお話ししたうえで選んでいただくようにしています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 結局、新築では何台つければいいですか?

家の大きさや間取りによりますが、一般的な広さのお宅なら「メイン空間に1台+個室や届きにくい場所に1〜2台」が現実的なところだと思います。大切なのは台数そのものより、1台になっていないことです。

Q2. 高気密高断熱の家なら1台でいけますよね?

断熱性能が高いほど有利になるのは事実です。ただ性能だけでは決まらず、間取りと空気の通り道、エアコンの位置が揃って初めて成立します。性能は必要条件で、十分条件ではないんですね。断熱の考え方は断熱はバランスという記事にまとめています。

Q3. サーキュレーターを使えば1台で足りますか?

空気を回す助けにはなります。ただ「本来届かない部屋に届かせる装置」ではありません。ドアを閉めた個室には、やはり届きません。

Q4. 2階が暑くて、エアコンが効きません

エアコンの台数より先に、家の作りに原因があることが多いです。屋根からの熱、窓からの日射、暖気の上昇。このあたりは2階が暑い家の原因と対策の記事で詳しくお話ししています。

全館空調と迷っている方もいると思います。うちが全館空調を採用しない理由と、モデルハウスで実際に使って分かったことは全館空調はやめたほうがいいのかを考えた記事に書きました。エアコンの台数で悩むということは、その手前の選択でも悩むはずなので、あわせて読んでもらえたらと思います。

おわりに

エアコンの台数は、間取りが固まってから考えるものだと思われがちです。でも本当は、間取りを考えるときに一緒に決めるものなんですよね。

どこに置くか、どこまで届かせるか、引き戸をどう使うか。そこまで含めて設計できると、少ない台数で気持ちよく暮らせる家になります。

そのうえで、2台目を。快適のためではなく、真夏に1台が止まったときのために。

そして、将来つけるかもしれない部屋にはコンセントを。今の数万円が、10年後の何十万円を防いでくれます。

打ち合わせのとき、「エアコンは何台で考えていますか?」と設計士さんに聞いてみてください。その答え方で、その人がどこまで暮らしを想像して図面を引いているかが、けっこう分かりますよ。

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