「地震保険って、入ったほうがいいですか?」
家づくりの終盤、火災保険の話になると必ず聞かれます。そして正直、いちばん答えにくい質問でもあるんです。
というのも、地震保険は「入れば安心」と言い切れる保険ではないから。壊れた家がタダで建て直せるわけではないですし、そもそも損害が出るほどの地震が来るかどうかは、誰にも読めません。
じゃあどう考えればいいのか。年間70棟ほどの家づくりに関わる中で、私がお客さんにお話ししている整理の仕方をお伝えしますね。あわせて、耐震等級3の家なら保険料が半額になるという、意外と知られていない話も。
この記事でわかること
- 地震保険で実際にいくら出るのか(全額ではありません)
- 「お守り代」として考えるという整理の仕方
- 耐震等級3で保険料が半額になる仕組みと、必要な書類
- 保険をかけ始めるのは、いつからか
まず、地震保険は「全額戻ってくる保険」ではありません
ここを誤解したまま入る方が、けっこういます。
地震保険で設定できる金額は、火災保険の30〜50%まで。つまり最初から、建物の価値の半分が上限なんです。しかも実際に支払われるのは、損害の程度に応じた割合になります。
| 損害の区分 | 支払われる額 |
|---|---|
| 全損 | 保険金額の100% |
| 大半損 | 60% |
| 小半損 | 30% |
| 一部損 | 5% |
見ていただくと分かるとおり、「一部損」だと保険金額の5%です。3,000万円の家で地震保険を1,500万円かけていたとしても、一部損なら75万円ほど。
これは制度が悪いのではなく、地震保険がそういう設計だからです。地震は被害が一度に広範囲へ及ぶので、民間の保険だけでは支えきれません。だから政府と共同で運営していて、そのぶん補償は「生活の再建を助ける」規模に抑えられているんですね。
押さえておきたいこと
地震保険は、家を建て直すための保険ではありません。壊れたあとの暮らしを立て直すための、当座の資金です。
だから私は「お守り代」として考えることをすすめています
じゃあ入るべきか、入らないべきか。
正直に言うと、損得の計算で答えを出せる性質のものではないと思っています。
理由は2つあって、1つは今お話ししたとおり全額は出ないこと。もう1つは、損害が出るほどの地震が、その家に来るかどうかが完全に未知数だということです。
来なければ払った保険料は戻りません。来たとしても全額は出ない。この2つを並べると、「元が取れるか」で考えるとどうしても割に合わなく見えてしまいます。
でも、そういうものだと思うんです。
だから私は、お客さんにはこうお伝えしています。損得ではなく、気持ちの問題として選んでくださいと。もしものときに何もない状態と、いくらかでも手元に入る状態。その差に安心を感じるなら、それは払う価値のあるお守り代です。
そしてもう1つ、必ず添えている助言があります。「実際にどのくらい支払われた例があるのか、保険の担当者に聞いてみてください」。
数字の話は、その道の人がいちばん具体的に持っています。パンフレットの説明より、担当者が語る実例のほうが、判断の材料としてよほど役に立ちますよ。
耐震等級3なら、保険料は半額になります
ここからは、意外と知られていない話です。
地震保険には割引制度があって、建物の耐震性能に応じて保険料が下がります。
| 割引の種類 | 割引率 |
|---|---|
| 耐震等級割引(等級3) | 50% |
| 耐震等級割引(等級2) | 30% |
| 耐震等級割引(等級1) | 10% |
| 建築年割引(1981年6月以降の建物) | 10% |
| 免震建築物割引 | 50% |
注意点が1つ。これらの割引は、重複して使えません。複数に当てはまっても、いちばん割引率の高いもの1つだけが適用されます。だから耐震等級3の家は、新築であっても「50%」が適用される形になります。
では実際いくら変わるのか。地域や建物によって差が大きいので幅のある話になりますが、年間1万数千円くらいだった保険料が、割引後は数千円から1万円ちょっとになるイメージです(5年一括で契約した場合)。
ここが大事です
耐震等級3の家は、保険料が半分になるうえに、そもそも損害が出にくい。この「浮いた分をお守り代に回す」と考えると、加入のハードルはかなり下がります。
耐震等級そのものの考え方は、耐震等級の仕組みをまとめた記事で詳しくお話ししています。
正直に言うと、頑丈な家ほど保険金は出にくいです
これは保険を売る側からは、あまり出てこない話だと思います。
熊本地震のとき、耐震等級3の建物16棟のうち14棟が無被害だったという調査があります。残る2棟も軽微な損傷にとどまりました。
地震保険の観点だけで見れば、壊れないということは、保険金が出ないということです。等級3の家に地震保険をかけても、出るとしても「一部損」の範囲にとどまる可能性が高い。
でも、これをがっかりする話だと思ってほしくないんです。
保険金が出ないのは、家がちゃんと守ってくれたから。地震のあとも住み続けられて、仮住まいも建て直しも必要ない。それは保険金より、ずっと価値のあることですよね。
家を長持ちさせるという意味でも、お金の面でも、まず建物を強くする。保険はその上のお守り。この順番は変わりません。
ただし、別に考えるべきものがあります
建物の強さで防げるのは「揺れ」までです。津波や液状化、地盤そのものの問題は、耐震等級では守れません。
ここは土地選びの話になるので、ハザードマップで色がついた土地に家を建てて大丈夫かの記事もあわせて読んでみてください。
割引を受けるには「住宅性能評価書」が要ります
さて、ここからが実務の話です。ここを知らないまま契約して、割引を取り逃すケースがあります。
耐震等級3の割引を受けるには、それを証明する書類が必要です。具体的には「住宅性能評価書」。第三者機関が性能を評価して発行する、公式な書類です。
つまり、割引を受けられるのは長期優良住宅を取得している家や、住宅性能評価を取っている家ということになります。
ここで大事な注意点を1つ。
「耐震等級3相当」では、この割引は受けられません。
「相当」というのは、評価機関の審査を通していない自社判断の表現です。書類がないので、保険会社に証明できないんですね。このあたりの落とし穴は耐震等級3「相当」に注意という記事で詳しく書きました。保険料という具体的な形で差が出てくる、という意味でも読んでおいてほしい内容です。
書類を出すタイミングと段取り
火災保険の見積もりを取るときに提示すれば適用されます。保険会社から「書類はありますか」と聞かれることもありますが、待たずに自分から担当者に声をかけるのが確実です。最近はメールで送れるので、住宅会社から出すことも、施主が出すこともできます。
「うちは性能評価を取っていますか?」。この一言を、契約前の打ち合わせで聞いておいてください。
保険をかけ始めるのは「引き渡し当日から」
最後に、新築ならではの疑問にお答えします。「工事中に地震が来たらどうなるの?」という話です。
工事期間中は、住宅会社が工事総合保険などに加入していることがほとんどです。建築中の建物は、まだ住宅会社の責任のもとにありますから。
そして施主の側は、引き渡しの当日から自分の火災保険(+地震保険)で家を守ることになります。それまでは基本的に大丈夫、という整理ですね。
ただ、ここは会社によって考え方が違う部分でもあります。工事期間中に何かあったときの扱いは、契約前や打ち合わせのときに確認しておくと安心です。「工事中の保険はどうなっていますか」と聞いて、すっと答えが返ってくるかどうかも、会社を見る材料になりますよ。
火災保険とセットで、一度見比べてみてください
地震保険は単独では入れません。必ず火災保険とセットになります。
そして地震保険の保険料自体は、どの保険会社で入っても同じです(政府と共同運営の仕組みなので)。差が出るのは、セットになる火災保険のほうです。
だから「地震保険をどうするか」を考えるときは、火災保険ごと見比べるのが結果的にいちばん早い。補償の中身と保険料を並べて、そのうえで地震保険を付けるかどうかを決める、という順番です。
複数の保険会社の見積もりをまとめて取り寄せて、補償内容と保険料を並べて比べられます。地震保険を付けた場合・付けない場合の差額も見えるので、判断の材料になりますよ。
火災保険そのものが「どういうときに使えて、どういうときに使えないのか」は、火災保険が降りないケースをまとめた記事に整理してあります。あわせて読むと、保険全体の輪郭がつかめると思います。
よくある質問(FAQ)
Q1. みんな地震保険に入っているのでしょうか?
2024年時点で、火災保険に地震保険を付けている割合(付帯率)は7割ほどです(損害保険料率算出機構の統計)。多数派ではありますが、入らない選択をしている方も3割いる、ということでもあります。
Q2. 保険金額はいくらに設定すればいいですか?
火災保険の30〜50%の範囲でしか設定できないので、その中で決めることになります。上限まで掛けるか抑えるかは、貯蓄とのバランス次第ですね。ここも保険の担当者に「うちの場合の選択肢」を出してもらうのが早いです。
Q3. 基礎にひびが入ったら、保険金は出ますか?
損害の割合で判定されるので、小さなひび1本では認定されないことが多いです。ただし判断するのは鑑定の担当者なので、気になる被害があれば、まず写真を撮って保険会社に連絡してください。自己判断で諦めないことが大事です。
Q4. 保険料の割引は、あとから申請できますか?
契約後に書類が揃った場合など、遡って適用してもらえるケースもあります。「証明書が出るのが引き渡し後だった」という場合は、諦めずに保険会社へ相談してみてください。
おわりに
地震保険は、入れば安心という単純な商品ではありません。全額は出ませんし、使う日が来ないほうがいいに決まっています。
だからこそ、まず家を強くする。そのうえで、浮いた保険料をお守り代にする。この順番で考えると、迷いが減ると思います。
そして忘れないでほしいのが、住宅性能評価書のこと。「耐震等級3相当」ではなく、きちんと評価を取っている家かどうか。それが保険料という形で、毎年の暮らしに効いてきます。
火災保険の話が出たら、「うちは地震保険の割引、使えますか?」と聞いてみてください。その一言で、数万円の差が生まれることがありますよ。


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